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Kiで目指している建物イメージ

① 4階建ての耐火構造(告示仕様の耐火被覆)による耐火建築物
② 断面が105×600、750の大断面集成材を用いたスパン7m未満の一方向ラーメンフレーム
③ ラーメンフレームの接合部はGIR、LSB、引きボルトを用いる
④フレームの樹種バリエーション

①4階建ての耐火構造(告示仕様の耐火被覆)による耐火建築物

  Kiでは4階建てを主な対象としている。現状では木造の生産システムは、軸組構法の住宅を対象として3階建てまでで整備されており、4階建てについては、これらを活用しつつ、一部拡張する形で整備されていくのが無理なく普及を進めるルートであると考えている。

  防耐火の面では、4階建てとそれを超える階数の間には求められる仕様にギャップがある。まず規模の面(法21条関係)では、上層から4層分は1時間耐火、それを超えると1.5時間以上の耐火性能が求められる。具体的な仕様では、例えば柱の場合、強化石こうボードで被覆する告示仕様では、1時間耐火構造は46mm(21mm+25mm)と1.5時間耐火では63mm(21mm 3枚張り)となる。これらの施工では、目地をずらす必要もあり、後者では施工の手間・コストが大きく増える。また、②で示している規模とも関係するが、Kiで対象としている建築物は都市部の大通りから1本入った街区での需要が主となると思われる。その場合、防火地域、準防火地域での規制がかかることが想定され、法61条においても耐火建築物が求められる。

  このように、1時間耐火構造による4階建てというのは、普及という面ではチャレンジではあるものの、法律や生産システム面からみると合理的な階数と言える。

②断面が105×600、750の大断面集成材を用いたスパン7m未満の一方向ラーメンフレーム

  木造にて4階建てを実現させ普及を目指すには、構造設計上、施工上、新たに参入する担い手が比較的抵抗なく受け入れられる構法であることが求められる。木造には様々な構法があり、それぞれに得意とする建物タイプがあるが、4階建てを目指すとなると、それらのうち大断面集成材構造が候補となる。また、大断面集成材構造において、大断面集成材の断面寸法やスパンなどのフレームの仕様を絞りこんでデータ収集を行うことで、設計者の判断による部分を少なくし、現在は物件ごとに設計が行われている接合部等の設計が共通仕様として運用することが可能である。これは鉄骨造などと同じような設計が可能となることを意味する。

  具体的な仕様については以下の点を考慮して設定を行った。
 ・集成材の断面を多くの集成材工場が製造できるものに設定すること
 ・接合具およびその配列に対して、効率の良い断面であること
 ・これで実現できるスパン・架構が無理のないものであること
 ・需要がある建物規模であること

  集成材は、積層方向の寸法は比較的自由が効くが、幅方向の寸法については、工場の設備等によって対応できる寸法が異なる。幅240mmおよび210mmではラミナの幅はぎが可能な工場では製造が可能であるが、2次接着での対応が必要な工場や、そもそも製造できない工場も多い。一方で105mmや120mmの幅は、住宅用の中小断面集成材で最も普及している幅であり、ラミナの確保も製造も容易である。

  また、集成材の製造だけでなく、プレカットが可能な断面かどうかも重要となる。プレカット工場も、住宅用の中小断面を対象としているものがほとんどで、幅105mm、120mmだと全ての工場で対応が可能であると言える。せいについては、住宅対応であれば450mmまでが主流だが、近年は600mmまでは対応が可能となっている工場も増加している。せい750mmとなると限定されるが、Kiで想定している架構では、スギの引きボルトの場合で検証した結果、2階床梁がせい750mm、3-4階床梁および柱はせい600mmとしており、せい750mmの加工を一部に限定することで、プレカットへの対応も無理のない体制とすることを狙っている。

  接合具との関係としては、③に示す仕様において、接合具の断面や長さなどの仕様、配列や本数に対して、最も効率的な断面が存在する。③に示す現在検討しているGIR、LSBの仕様に対しては、これまでの検討から105mm幅が性能を確保するための最低限の縁距離等が確保でき、最も効率が良い幅となっている。異なる径や仕様の接合具の場合には、120mmが最適となる場合もある。性能面で最適断面とすることは、コスト面でも最適になる可能性が高い。

  上のような理由から集成材の断面が決定されたが、このことから、おのずとスパンも絞られてくる。

  これまでは、非住宅木造建築物の場合は学校の8mスパンが目標とされることが多かった。しかし、4階建てのビルのニーズを考えると、都市部の大通りから1本中に入った街区などが想定され、そのような敷地では、江戸時代の道に面する敷地の幅(間口)に応じて税金(地子や家賃)が決まる仕組み(間口課税)から、間口が6~7mで、奥行きがその2~3倍あることが多い。そこで、Kiではこの間口に合わせたスパンの1方向ラーメンの架構を設定した。このスパンを2連続させることも可能ではあるが、その場合には、十字型の柱梁接合部が出現し、その場合、部材断面を変更し、パネルゾーンの設計やそれらにとりつく部材の設計が複雑になることから、1スパンに限定している。

③ラーメンフレームの接合部はGIR、LSB、引きボルト

  接合具はGIR、LSB、引きボルトとし、その仕様・配置も、フレームの断面寸法と相性の良いものに限定している。接合具の設定の方針としては、以下の2点を重視している。
 ・誰もが接合具を購入し自由に使用できるオープンシステムであること。
 ・メーカーなどが開発に注力している仕様は避け、業界全体として選択肢が広がるようにすること。

  引きボルトについては一般流通しており、加えてその設計方法なども各種指針など示されている。ただし、剛性が低く、フレームの性能も低い。GIRとLSBは、高い剛性、耐力を確保できるが、靭性が低く、接合具・接合部の開発には靭性をどう確保するかが課題となる。Kiでは、図1に示す仕様のGIR、LSBを対象としてフレームを設定し、それらのデータを取得してきた。

  GIR、LSB単体にも様々な仕様があり、仕様が異なれば、接合具としての性能は異なる。Kiでは、図1に示したように、過去には異なる仕様のものも検討してきたが、メーカーの開発状況や施工性や防耐火への対応に違いなどに配慮して、現在の仕様としている。また、可能な限り既製品を用いる方針ではあったが、性能面からフレーム断面に合わせた特注の長さとした経緯がある。

  Kiで示している仕様は必ずしもその仕様のまま普及を目指すものではなく、その考え方や性能の確認方法(実験方法や理論式)などを整備・公表し、それらを活用してより良いものを各メーカーが開発するというサイクルが生じるのを後押ししたいという考えがある。


  以上のような思想で、建物イメージおよびその仕様について決定している。梁間方向の水平力に対しては、フレームの本数をコントロールすることで成立させ、桁行方向については、面材耐力壁、ブレースによるものとしている。図2のようにフレームの配置は同ピッチで配置することも可能であるが、耐火被覆の容易性やプランの自由度を考えると、フレームを束ねて配置することも可能である。
図1 GIRとLSBの仕様の決定理由とその変遷
図2 フレーム配置の例

フレームの樹種バリエーション

  大断面集成材には、調達しやすい樹種、等級が存在し、KiHPにもその内容を掲載している。Kiフレームでは、それらのうち以下を対象に情報整備をしてきた。
   スギ  :対象異等級構成 E65-F225
   カラマツ:対象異等級構成 E105-F300

  ただし、カラマツは西日本では入手しづらく、カラマツに代替できるものとして、ヒノキを対象としたという要望があった。そこで、2025年度には、ヒノキおよびヒノキ・スギの異樹種集成材(どちらもE95-F270)を対象に、別の事業で、接合部データを取得したところである。

  表に柱梁でどの樹種の組み合わせがあり得るかを整理した。現状、柱・梁ともに同じ樹種・等級の組み合わせにて実験データを取得しており、フレームの計算例(e-learningにて公開中)は柱・梁ともカラマツの例で作成している。

  柱と梁を異なる樹種とする場合は、構造面と調達面での事情が影響すると考えらえる。構造面では、図に示すように、このタイプの接合部では柱に梁がめり込む挙動を示すため、柱にめり込み強度が高いスギ以外の樹種を用い、梁にスギを用いるのが合理的となる(表中●)。一方、調達面では、北海道を除くほぼ全国で入手しやすく蓄積量も多いスギを多く使いたいというニーズが高いことから、柱梁ともスギ、柱はスギという使い方も排除できない。柱をスギにする場合は、めり込み面では不利であるが、梁にヤングの高い樹種を用いるため、スパンを想定していたものより飛ばしたいというニーズがあれば、合理的となる場合も想定される(表中△)。

 それ以外の組み合わせは、調達できる地域を考えてみても、あまりニーズがあるとは考えられず、構造面からのメリットもなさそうである。

表 Ki・105シリーズのラーメンフレームの樹種組み合わせの可能性

部材/樹種/等級

柱

カラマツ

 E105-F300   

ヒノキ

 E95-F270   

異樹種(スギ・ヒノキ)

E95-F270 

スギ

 E65-F225   

梁

カラマツ

E105-F300

○

データ有

計算例有

-

-

△

ヒノキ

E95-F270

-

○※

データ有

-

△

異樹種(スギ・ヒノキ)

E95-F270

-

-

○※

データ有

△

スギ

E65-F225

●

●

●

○

データ有

●:めり込み強度より合理性あり
△:調達・蓄積量および梁に高ヤングの材を用いる面から合理性あり
※:2025年 他事業でデータ取得

  現状、柱・梁とも同じ樹種の組み合わせの場合は柱脚および柱梁の実験データを取得している。また、柱・梁ともカラマツのデータを用いてフレーム単体の計算例を示していることから、それらを参照することで、同じ樹種の組み合わせのフレーム単体の計算は可能となる。

樹種バリエーションのデータ整備フロー(案)

2026年4月時点のバリエーションの全体を表に示す。まずは、上記③の図1に示したように施工性などを考慮して接合具の種類を選択し、次に、集成材の樹種を調達しやすいもので選択することになる。

  今後は、データがない仕様について、地域のニーズや構造面での合理性を検討し、必要に応じてデータの取得を行う必要がある。

  これまでの成果より【接合具実験→接合部実験→フレーム実験】の関係性が明らかになっていることや、接合部性能の推定式が提案されていることから、その検証手順は図のようになると考えられる。現状整備されている接合具データ等を精査し、最も効率よく樹種違いの設計データを作成する手順にて実施していく必要がある。
フレームの仕様バリエーション
樹種バリエーションのデータ整備の手順案
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